バイオリンの基礎ってなあに〜幼児編〜
前回のこのシリーズでは、中学1年生で楽譜がすでに読める生徒にレッスンするという事例を取り上げてみましたが、今回は幼児です。
レッスン事例〜年中さん幼児 メリーさんのひつじ イ長調で〜
読譜はこれから、ボウイングは全弓だけできるという設定にしてみたいと思います。
私のレッスンでは全弓から教えて、どんどん細分化していく→半弓→3分の1弓などと教えています。小さい生徒さんは、手首やひじかんせつを動かすことより、背中から大きく弓を動かす方が、身体のコントロールがしやすいように思います。前腕の動きが上手になり、そのあと手首の動きが7歳位で上手にできるようになります。もちろん個人差があります。手の力がついてくると、指も自然に丸く持てるになる様に見受けられます。
1)楽譜の流れ 左から右へ 上のだんから下の段へ
論理的な思考が難しかったり、割合の感覚が難しかったり、自分を客観的に見られないのが幼児の特徴かと思います。なるべく難しいことは教えずに、わかりやすく教えていきたいものです。ただし、楽譜には記号としての意味があって、それはどうも左から右に流れていくものらしいということは、まず理解させていきたいと思っています。
そのためには、音楽を流しながら、もしデーターがあればとてもレッスンがしやすいですが、ない楽曲だったら片手でピアノを弾きながら、もう片手で一緒に楽譜を指追いしていきます。
絵本の読み聞かせをしてても、文字を見せながら読み聞かせると、そのうち一緒に目で追うようになると思うのですが、そういう感じで、まずは楽譜にはなにかしら意味があるんだということを知らせていきます。
やってみせたら、今度は一緒に指おいをやっていきます。最後にひとりでやってもらいます。この最後にひとりで、自立してやらせるという一手間が、かなり大事だと思います。
2)楽譜を細分化していく
楽譜の中には、いろいろな情報がいっぺんに詰まっています。音の長さ、音の高低、そして最後にそれは自分のバイオリンとどうつながっているのかということを理解できないと、楽譜を読んで弾くという行為につながりません。
リズム
まずリズムだけやっていきます。最初のころは手で一拍を数えながらリズムを読むということはせずに、単純に「一拍は黒い音符にボウがついてるのが一拍」「白い音符にボウがついていたら2拍」と教えます。音符の名前なども無視です。二分音符など名前を覚えることより、体感することが大事ではないかと思います。
拍子記号も今の段階では教えません。曲に入る前に、カードを使ってリズムボールをたたくという体験をさせて曲の中でのリズムをたたかせます。その際、となりで先生が1・1・1・1 1・1・12 というように手助けをします。これも指追いと同じで、やってみせる→一緒にやる→ひとりでやらせる という段階でいきます。できる子は、段階をスキップしても大丈夫です。
リズムボールができたら、今度は自分の楽器とつなげていきます。スラーは出てこないので、リズムを担っているのは右手になります。右手=ボウイングをさせながら、隣で一緒に数えてあげます。
最後はやはりひとりで。その際、心のなかだけで数えられない=黙読ができないという子もいますので、その時は口に出して「1・1・1・1」と数えてもいいことにします。長い音は弓のスピードがおそくなるようにやってみせて、必ずマルトレ状態じゃなく、レガートで弾かせるようにしています。
メ・リ・サン・ノ・ひ・つ・じ・と、とても歌にならないように弾かせるのではなく、メリさんのひつじ〜とレガートでバイオリンが歌っているように弾かせることを目標にします。弓のスピードを根気強く教えると、どんなに小さい子でも音楽的に弾けます。
音の高低
さて、次は左手ですね。生徒の様子にもよりますが、一度この曲を聴いてもらうのもいいかもしれません。興味を持たせる、楽しい気持ちにさせるということが、幼児の場合はとても大事だと思います。楽しい気分で勉強すると、たくさん身につくということが脳科学ではわかっているそうです。バイオリンと一緒に歌ってみたりお勉強の時間が長くなったら、楽しくできることをはさむといいかもしれませんね。
さて、この曲は以前にも書きましたが、A H Cis の三音で弾けます。私のレッスンでこの曲を弾かせるとしたら、バイオリンランド2巻「ハロー1の指」が終わった頃だと思います。この段階で、この3音はバイオリンで押さえる場所も把握しているという状態になります。と言っても、子どもって一回やったくらいじゃ忘れるんですよね。根気強くいきます。
ユリカ式音唱法
本来音程感覚をきちんとみにつけさせるとしたら、階名唱でミレドレミミミと歌わせるのが本筋だと思うのですが、10歳前の生徒はこの方法は混乱させてしまうことが多いのです。色々悩みぬいたあげく、ユリカ式で音名唱でも階名唱でもない方法で歌わせています。Aをラ Hをシ Cisをチスと歌わせるのです。もうこれは、賛否両論あるかと思いますが、左手の場所を覚えさせている過程にあるということで、実践しているものです。
1.まずは本のように読む
読ませている最中には音程はつけません。本を読むみたいに読ませます。これだって、子どもにしたら大変な作業です。
2.音程をつけて歌う
次に音程をつけて歌ってあげます。ここはとても個人差があり、聞いてすぐに声を調整して歌える子もいますし、まったく歌えない子もいます。歌えない子も、別にとがめません。上手に歌えない子には「お鼻でうたったみよう」といって、ハミングで高い音や低い音を行ったり来たりさせながら、いまのが最初の音!みたいな感じで当たるまでハミングで歌わせ、そこからふううん→チスみたいな感じで言い直させたりすると、そのうち正しい音程が歌えることもあります。何年もダメな子もいます。でも、一生歌えなかった子はいませんので、そのうちにできるようになります。子どもを教えるのは「待ちの姿勢」と「いつかできるようになる」とのんびり構えることかなと思います。
3.弾く
歌えたら今度は弾きます。弾く前に指の型「1と2はひらくよね」という確認もします。まず左手だけ、私が「チス、シ、ラ、シ」と読んであげながら指板の上に置かせます。それが終わったら、いよいよボウイングと合体させます。
幼児にバイオリンを弾かせるって、気が遠くなるようなステップです。子どもはひとつひとつクリアーしながら、達成感を感じてくれているようです。レッスン中に私が説明すると「かんたん、かんたん!」って返事をする生徒ちゃんがいるのですが、そう感じてくれたんだと思ってうれしくなります。かんたんかんたん!って思ってもらうように、楽しく説明するのが大事ですよね。
まとめ
なんでこんな手間ひまかけて教えるかというと、バイオリンの「基礎」を身につける方法だからです。一曲だけ覚え込ませて、何回も何回も隣で弾いて聞かせて、教え込んで弾けるようにさせたら、もう少し大人は楽に教えられるかもと思うのですが、次に新しい曲の出会ったら、また同じだけ一から努力しないと弾けるようになりませんよね。
楽譜に意味があるということが少しでもわかれば、次に同じ音が出てきたら、前の知識が活かせます。こうやって練習すればいつか弾けるようになると分かれば、次の曲もがんばります。そしてなるべく「初心者の乱暴な演奏」じゃなくて、歌っているような演奏を目指して教えたいなと思っています。説明は子どもにもわかるように簡単に、求めている美しさは大人並に求めていくことが、子どもを教える時の私の指導スタンスです。
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